
行事の写真に写った「開いた口元」をどう受け止めるか
遠足や行事の写真を見返して、息子の口元が開いていることに気づく。先生からも授業中に同じ様子だと聞き、生え替わりを控えた歯並びが気になり始めた保護者の方もいるでしょう。一枚の写真だけで、将来の歯並びが決まるわけではありません。この記事では、口呼吸と歯並びの関係を研究の傾向から整理します。あわせて、鼻づまりや舌・唇の使い方との関わり、家庭で気づけるサイン、歯科医院と耳鼻咽喉科への相談の目安もお伝えします。お子様を責めずに、次の一歩を決める材料にしてください。
この記事の要点まとめ
- 写真だけで歯並びは判断せず、日中や睡眠中の口元・呼吸を観察します。
- 鼻づまりや舌・唇の使い方も関係することがあり、気づいた様子を記録します。
- 鼻の症状は耳鼻咽喉科、歯並びや口の働きは歯科で相談します。
目次
- 小学1年生の口ポカンで歯並びは悪くなりますか?
- 鼻づまりや舌・唇の使い方は、口ポカンに関係しますか?
- 写真で口が開いていたら、いつ・どこに相談しますか?
- 家庭での対応から歯科での確認まで、どう進めますか?
小学1年生の口ポカンで歯並びは悪くなりますか?

口が開いていることだけで、歯並びが悪くなると決まるわけではありません。口呼吸が長く続くと顎や歯列の形に関わる可能性は報告されていますが、影響があるかどうか、どの程度かは、お子様ごとに確かめる必要があります。
口が開いているだけで、口呼吸といえますか?
写真に写った一瞬の表情と、普段の呼吸の仕方は分けて考えます。話している途中や笑った瞬間に口が開くのは、ごく自然なことです。
見ておきたいのは、テレビを見ているときや本を読んでいるときなど、くつろいだ場面で唇が離れたままになっていないか。寝ているときに口を開けて息をしている、朝起きると口が乾いているといった様子も手がかりになります。日中と睡眠中の両方を見ると、「たまたま」なのか「いつもの呼吸」なのかが判断しやすくなります。
口呼吸が続くと、舌の位置や噛み合わせに何が起こり得ますか?
鼻で呼吸しているとき、舌は上あごに軽く触れ、唇は閉じています。口呼吸が習慣になると舌が下がりやすくなり、舌と唇・頬の筋肉の力のつり合いが変わると考えられています。
口呼吸のお子様でも、顎や顔の成長には個人差があり、影響の有無は医師が判断します。上の歯列の幅が狭くなる、上あごが深くなるといった傾向も示されていますが、研究によって結果に差があります1。
歯並びには遺伝による顎や歯の大きさ、指しゃぶりなどの癖も関わります。口呼吸だけを原因と決めつけることはできません。
歯並びが変わる前なら、口ポカンを放っておいてもよいですか?
今すぐ矯正が必要という意味ではありませんが、気づいた時点から経過を見ておくと良いでしょう。口が開いていると口の中が乾きやすく、唾液が汚れを洗い流す働きが弱まります。むし歯や歯肉炎、口臭が気になりやすくなる点も見ておきたいところです。
小学校低学年は、乳歯から永久歯への生え替わりと顎の成長が同時に進む時期です。変化を早めに知っておけば、様子見で十分か、相談したほうがよいかを落ち着いて判断できます。
ポイント
口ポカンは歯並びの変化を決めるものではなく、普段の呼吸や口の使い方を見直すきっかけです。
鼻づまりや舌・唇の使い方は、口ポカンに関係しますか?
関係することがあります。鼻から息がしにくい状態だけでなく、舌の置き場所や唇を閉じる筋肉の使い方も、口ポカンの背景になり得ます。原因が一つとは限らないため、写真だけで判断せず、いくつかの面から見ていきます。
季節によって鼻が詰まるとき、何を確かめますか?
まずは、鼻づまりのある時期と口が開いている時期が重なるかを見てください。家庭でメモしておきたいのは次のような点です。
- 鼻づまりや鼻水が出やすい季節、くしゃみや目のかゆみがあるか
- 寝ているときのいびき、息が止まるように見える、寝苦しそうな様子
- 朝の口の渇きや、日中に眠そうにしていることが多いか
アレルギー性鼻炎の有無や、のどの奥にあるアデノイド・扁桃の大きさを診断するのは耳鼻咽喉科です。歯科で歯並びを見ても、鼻の病気の有無までは判断できません。
舌の位置や唇の閉じ方は、家庭でどこまで見られますか?
くつろいでいるときの唇、飲み込むときの動き、食べ方や話し方は、家庭でも無理なく見られます。たとえば、飲み込むときに舌先が前歯の間から見える(舌突出癖)、口を閉じると下あごに梅干しのようなしわが寄る、くちゃくちゃと音を立てて食べる、サ行やタ行が舌足らずに聞こえる、といった様子です。
舌先は、上の前歯の少し後ろにある「スポット」と呼ばれる位置に触れているのが目安とされます。ただ、一度確かめただけで舌癖や口腔機能(食べる・話す・呼吸するといった口の働き)の問題を判定することはできません。気づいたことは日付と場面を添えてメモしておくと、相談の場で役立ちます。
「口を閉じて」と繰り返し注意したほうがよいですか?
繰り返し注意するより、閉じにくい理由を確かめるほうが先です。鼻が通りにくいお子様にとって、口を閉じ続けることは息苦しさにつながります。本人の努力だけで続けるのは難しい場合があるのです。
注意が重なると、口元を気にして写真を嫌がったり、自信をなくしたりすることもあります。声をかけるなら「鼻、つまってない?」と体調を気づかう形にすると、責められた印象を与えにくくなります。
写真で口が開いていたら、いつ・どこに相談しますか?

一枚の写真だけなら、まずはしばらく普段の様子を見てみましょう。口が開く状態や鼻の症状が続くなら、鼻が中心であれば耳鼻咽喉科、歯並びや口の使い方が気になるなら定期受診している歯科医院に相談するのが目安です。
一時的な口ポカンと、相談したい状態はどう見分けますか?
「1日に何分以上なら受診」という一律の基準はありません。回数よりも、場面と続き方で考えます。
| 見る点 | 様子を見ながら観察 | 相談を考えたい |
|---|---|---|
| 口が開く場面 | 写真や集中した一瞬だけ | 授業中・遊び・テレビなど、さまざまな場面で繰り返す |
| 鼻の状態 | 風邪や花粉の時期だけ | 鼻づまりのない日にも口が開いている |
| 睡眠 | 特に気にならない | いびき、寝苦しそう、朝の口の渇きが続く |
| 食事・話し方 | 気にならない | 食べにくそう、音を立てて食べる、発音が気になる |
表に当てはまらなくても、保護者の方が気がかりなら相談してかまいません。口呼吸と顎や歯列の形との関連は研究で報告されていますが21、目の前のお子様に当てはまるかは、診てみないとわからないためです。
鼻の症状があるなら、歯科と耳鼻咽喉科のどちらへ行きますか?
鼻づまりが長引く、寝ているときの呼吸が気になるといった場合は、耳鼻咽喉科への相談を先にするのが一つの目安です。鼻やのどの通りを確かめられるのは耳鼻咽喉科だからです。
歯科では、生え替わりの進み具合、噛み合わせ、舌や唇の使い方を確認できます。どちらか一方に絞る必要はありません。耳鼻咽喉科で言われたことを歯科に、歯科で気づいたことを耳鼻咽喉科に伝えると、全体像が見えやすくなります。
定期受診するとき、何を伝えますか?
新しく受診先を探す前に、ご家族で通っている歯科医院の定期受診の場で相談してみるのも一つの方法です。伝える内容は短いメモで十分です。
- 写真で気づいた時期と、学校から聞いた授業中の様子
- 鼻が詰まりやすい季節と、耳鼻咽喉科の受診歴
- 寝ているときの様子(いびき・口の開き・朝の渇き)
当院を含め、どの歯科医院に相談する場合も、写真で気づいた時期や鼻・睡眠の様子を伝えると、状況を整理しやすくなります。下のお子様と一緒の受診でも、気になることを短いメモにしておくと伝えやすくなります。
家庭での対応から歯科での確認まで、どう進めますか?
まず鼻の通りと普段の様子を見て、歯科では歯並びと口の働きをあわせて相談する、という順番で進めます。訓練や矯正を自己判断で始めず、必要かどうかと経過の見方を確認してから取り組むと、お子様の負担を抑えられます。
家では、口を閉じる練習を始めてもよいですか?
最初は観察と声かけにとどめておきましょう。鼻づまりがある状態で口を無理に閉じさせたり、テープなどで口をふさいだりすることは避けてください。
インターネットで紹介されている舌や唇の体操も、お子様の状態に合っているとは限りません。練習が必要か、どの方法が合うかは、歯科医院で口の働きを確かめたうえで相談することをおすすめします。
歯科では、口の働きと歯並びをどう確認しますか?
歯科では、生え替わりの状況、噛み合わせ、舌や唇の使い方、食べ方などを確認します。舌や唇の筋肉の使い方を整える口腔筋機能療法(MFT)や小児矯正が選択肢に挙がることもありますが、口ポカンだけを理由に決めるものではありません。
歯並びは見た目だけでなく、歯みがきのしやすさや食べやすさといった口の働きとあわせて考えることが大切です。当院が予防を診療の土台にしているのも、一度きりの判断ではなく、成長に合わせて変化を見続けることに意味があると考えているからです。
対処を始めた後は、何を見て次の判断につなげますか?
鼻の通り、日中の口の開き方、寝ているときの様子、歯の生え替わりを、定期受診のたびに振り返ります。変化が見られるまでの期間には個人差があります。
鼻やのどの治療で呼吸が改善した後に、前歯の傾きや歯列の幅に変化が見られたという報告はあります。ただし対象の研究は7件と少なく、追跡期間も12〜60か月と幅があります3。呼吸の改善がそのまま歯並びの変化につながるとは言い切れないため、経過を記録しながら判断していきます。
矯正を提案された場合は、方法、通院の頻度、費用、自由診療かどうかを、その医院で確認してから決めてください。
ポイント
家庭では観察と記録を、口の働きの評価や練習の判断は歯科医院で。この役割分担が、お子様に無理をさせない進め方です。
よくある質問
Q. 歯並びは母親から遺伝しますか?
A. 顎の大きさや歯の大きさなどは、親から受け継ぐ部分があります。ただ、母親だけでなく父親からの影響もあり、口呼吸や舌の癖といった生活の中の要因も重なります。遺伝だけで決まるわけではないため、両方の面から見ていきます。
Q. 口呼吸はやめたほうがいいですか?
A. 鼻で呼吸できる状態が望ましいとされていますが、鼻が詰まっているときに口で息をするのは体の自然な反応です。無理にやめさせるのではなく、鼻づまりなど口呼吸の背景を確かめることから始めてください。
Q. 小児歯科と一般の歯科医院は何が違うのですか?
A. 小児歯科は、子どもの成長や歯の生え替わりに配慮した診療を行う診療科です。一般の歯科医院でも、お子様の歯や歯並びの相談に対応しているところは多くあります。ご家族で通い慣れた歯科医院があれば、まずそこで相談すると、お子様の緊張も和らぎやすくなります。
Q. 口の働きの訓練や小児矯正に保険は使えますか?医療費控除の対象になりますか?
A. 口の機能の発達に関する管理の保険適用は、診断内容によって異なるため、医師にご相談ください。一方、小児矯正の多くは自由診療(公的医療保険が適用されない)です。
生え替わりの時期に行う小児矯正(いわゆる第1期治療)の費用は、検査・診断料、装置の費用、通院ごとの調整料などを含め、使う装置や治療内容によって変わります。治療期間や通院頻度にも個人差があり、永久歯が生えそろった後に追加の矯正(第2期治療)が必要になると、別に費用がかかる場合があります。第2期治療で積極的に歯を動かす期間は、治療内容により個人差があるため、医師にご相談ください。これらは一般的な説明であり、当院の費用ではありません。当院の費用は診察のうえでご案内します。
噛み合わせの機能改善を目的とした小児矯正は医療費控除の対象となり得ますが、対象かどうかは医院や税務署に確認しておきましょう。
小児矯正で起こりうる主なリスク・副作用
- 装置をつけた直後や調整後に、歯が浮くような痛みや違和感が数日続くことがあります
- 装置が頬や舌に当たり、口内炎や小さな傷ができることがあります
- 装置のまわりに汚れが残りやすく、むし歯や歯肉炎になりやすくなります
- 装置に慣れるまで、話しにくさや食べにくさを感じることがあります
- 取り外し式の装置は、使用時間が足りないと予定どおりに進まないことがあります
- 歯の根への影響が気になる場合は、医師にご相談ください
- 治療後に歯並びが元に戻ろうとする「後戻り」が起こることがあり、保定装置の使用が必要になります
こうした点も、事前に説明を受けておくとよいでしょう。
参考文献
1. Lekvijittada K, Uengkajornkul P, Changsiripun C. Dental arch dimension and palatal morphology in children and adolescents with mouth breathing: a systematic review and meta-analysis. BMC Oral Health. 2026. PMID: 42026531 / DOI: 10.1186/s12903-026-08349-9
2. Zhao Z, Zheng L, Huang X, et al. Effects of mouth breathing on facial skeletal development in children: a systematic review and meta-analysis. BMC Oral Health. 2021. PMID: 33691678 / DOI: 10.1186/s12903-021-01458-7
3. do Nascimento RR, Masterson D, Mattos CT, et al. Dentoalveolar alterations after interventions to relieve mouth breathing: Systematic review and meta-analysis. Journal of Orofacial Orthopedics. 2026. PMID: 39815054 / DOI: 10.1007/s00056-024-00568-5
2002年 朝日大学歯学部 卒業
岐阜県 各務歯科 勤務
大阪府 石橋歯科医院 勤務
2015年 ふじもと歯科 開業
2022年 医療法人 ふじもと歯科へ法人化
大阪府歯科医師会
堺歯科医師会
日本矯正デジタル歯科学会
日本歯科医学会
国際歯周内科学研究会
国際食育士協会 歯科食育士
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